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POISON
 

 突然のことだった。
 屈強な腕に躰を捕らわれて身動き出来なくなり思わず身を固くした所を、しなやかな指に顎を捕らえられ顔を上向かされ、強引に口唇を重ねられ何かを流し込まれた。
「!?」
 それが何だったのか考える間もなく、ヘネラリーフェの躰から力が抜けガクリと床に崩れおちる。
 ボンヤリとしてはいるものの意識はある。だが、躰が思い通りに動かない。それでもヘネラリーフェは力の入らない躰に閉口しながらも、嘲笑の口元で自分を見下ろす男の金銀妖瞳を見上げ凝視した。
(なにを……)
 声にならない声を読みとったのだろうか、ロイエンタールが端麗な口元にゾッとするような魅惑的な笑みを浮かべながら冷たく言い放つ。
「何度も言わせるな。お前は捕虜、いわば俺の人形だ。人形の分際で主に逆らおうなどと考えるから、お仕置きが必要になる」
 心配するな……ロイエンタールは凄惨な笑みを湛えながら最後にそう付け加えた。
「安心しろ、呑ませたのはただの睡眠薬で、特にいかがわしい薬ではない。もっとも、お望みならば催淫剤でもなんでも用意してやるが」
 量を調整すれば女の躰の自由を奪うくらい睡眠薬で十分事足りるのだ。ヘネラリーフェは心身共に鍛え上げられた軍人だが、だが今の彼女は負傷の後遺症で体力は市井に住む極一般の女性より遙かに落ちている状態なのである。ロイエンタールには彼女の躰の自由を奪うくらい造作もないことだろう。
 ならば力づくで奪えば良いものを、敢えて薬で躰の自由を奪い、だが意識は残したまま嬲る気でいるとは……恐らくロイエンタールはヘネラリーフェのような女を辱めるにこれほど有効な手段はないと確信しているのだろう。誰よりも誇り高い女だからこその残虐で凄惨な罰……
「最低……」
 恐らく声を出すことにさえも閉口しているのだろう。荒い息の下、震える口調で、だがヘネラリーフェは刺すような鋭い視線でロイエンタールを見据えながら一言言い放った。
「なんとでも」
 どんな状況に陥ろうと、どれほどの屈辱と恥辱を与えられようと、輝きと意思の強さを失わない青緑色の双眸のナイフのような鋭い視線に、ゾクゾクするような倒錯的感覚を覚えながらもロイエンタールは事も無げにそう言い放ちながらヘネラリーフェの華奢な躰を抱き上げた。
「うっ」
 豪奢な天蓋付きのベッドに乱暴に投げ出されたヘネラリーフェは、今だ完治していない傷の痛みに不自由な躰を捩って微かに呻いた。が、それでもロイエンタールを見据える双眸から怜悧な光が薄れることはなく、それが逆にロイエンタールの劣情を掻き乱し征服欲に火を付ける。
「その強がりがいつまで保つかな」
 ヘネラリーフェの耳元に毒を吹き込むように囁くロイエンタールの低く艶やかな声に、ヘネラリーフェの肢体がビクリと震えた。これまでに何度となく彼に強引に開かれた躰が、無意識に反応してしまうのだろう。
「ショーの始まりだ」
 楽しげに紡がれる言葉がヘネラリーフェの心に重くのし掛かる。それは彼女を絶望の淵へと誘う言葉でもあったのだから。

 

◆◇◆◇◆

 
「いや……やめ……」
 力の入らぬ身を僅かに捩らせて抗うヘネラリーフェの着衣を、ロイエンタールは殊更にゆっくりと焦らすように一枚ずつ剥いでいった。時折ワザと肌に触れるロイエンタールのしなやかな指の感触に反応する白皙の肌を楽しむかのようなその行為は、猛禽が獲物をいたぶる様にも似て…… 
 やがて、ロイエンタールの手の中で一糸纏わぬ姿となったヘネラリーフェを満足気な表情で見下ろすと、ロイエンタールは急に思い付いたかのように一旦ベッドを降りバスルームへと消えた。
 ほどなくして戻ってきた彼の手には二本のシルクの幅広の紐。恐らく、バスローブの腰紐だろうそれを嬉々とした表情で手で弄びながらベッドサイドまで戻ってきた所で、ヘネラリーフェの不安げに揺れる視線とロイエンタールの二色の双眸が絡み合った。
「どうせなら、お前も楽しむがいい」
 端麗な口元に嘲笑を浮かべながらそう言い放つと、彼はいきなりヘネラリーフェの細い腕を掴んで頭上に押さえつけた。
「な……!?」
 息を呑んで、だが抗うこともできぬままロイエンタールの行為を見守ることしかできないヘネラリーフェの青緑色の双眸の目前で、彼は彼女の細い手首に先程バスルームから持ってきたシルクの紐をきつく巻き付け、更にそれを天蓋の柱へと繋いだ。
 左右それぞれの腕を、左右それぞれの天蓋の柱に縛り付ける。これでヘネラリーフェは薬の効果だけでなく、物理的にも躰の自由を奪われたことになったわけである。
「これでどうやって楽しめって言うのよ」
 どうやら少しだけ睡眠薬の効果が薄れてきたようである。躰の自由は利かないものの言葉を紡ぐことには支障はなくなってきていた。とは言っても、この状況では無力に等しい最後の足掻きにすぎないのだが。が、どういう状況に陥ってもヘネラリーフェはヘネラリーフェなのである。
「縛り付けられたままでという趣向もたまには良かろう?」
 特に相手がロイエンタールを強固に否定する女ならば尚更である。これまでに、ロイエンタールが力づくで奪った女など存在しない。そんなことをする必要がなかったからというのがその理由だが、とにかく彼は自らの前に無防備に躰を投げ出してくる女を、当然の権利とでも言いたげに手折ってきた。
 だが、ヘネラリーフェに出逢って、彼は初めて自分の意のままにならない女を知ったのである。意のままにならなければ、無理矢理力づくで従わせればいい……敵将である女に対して、通常ならありえない激情がロイエンタールを突き動かした。
 その想いが何から来ているのか、何に対してなのか、ロイエンタールにはわからない。だが、ヘネラリーフェを見ていると無性に苛つき、そして何が何でも自分の足下に屈服させたくなるのだ。
「悪趣味」
 動揺を押し隠しながらヘネラリーフェがそう吐き捨てる。
「まったくだ……悪趣味以外の何ものでもないな」
 だが、ヘネラリーフェを欲望の赴くままに抱き、貫き、揺さぶり、突き上げ、泣いて許しを請うまで責め立てたいというロイエンタールの劣情と征服欲は、己に最大級の嘲笑と冷笑を浴びせているにもかかわらず薄れる気配を見せてはくれない。
「どうせ、悪趣味以外の何ものでもないんだ。この場限りとばかりに、お前もせいぜい乱れて見せろ」
「誰があんたなんかに……」
 では、何処まで保つか楽しませてもらおうか……ロイエンタールはそう言って忍び笑いを洩らしながら、ヘネラリーフェの肢体にのし掛かってきた。

 

◆◇◆◇◆


 ロイエンタールの手がヘネラリーフェの琥珀の髪をまさぐる。それが唐突にグイっと引かれた。
 ヘネラリーフェの細く白い喉元がそれによって仰け反るように露わになり、ロイエンタールはそこを逃さず舌を這わせる。
 彼の舌の感触にヘネラリーフェは耐えるかのように瞳をギュッと閉じ、顔を横に背けようとした。が、ロイエンタールはそれを許さず、髪を引く手とは逆の手で彼女の顎を捕らえると正面を向かせたまま固定する。
 腕を戒められている身ではどうすることもできず、ヘネラリーフェにはただ口唇を噛みしめることしかできなかった。
 ロイエンタールの舌が首筋から胸元へと徐々に降下していく。優美な指がその舌の後を辿り、やがて小ぶりながらも形の良い二つの膨らみに到達した。
 掌で包み込むようにその膨らみを撫でさすり、そしていきなり強くギュッと掴む。
「つっ……」
 堪えきれず、ヘネラリーフェの可憐な口元から苦痛を訴える呻き声が漏れる。苦悶の声さえ、だが今のロイエンタールの耳には心地良いものであった。
 指で敏感な先端を撫で転がし摘む。その度にロイエンタールの身体の下にある華奢な肢体がビクリと跳ねる。ロイエンタールは更に敏感なそこを口に含み、舌先で転がすように舐め、そして吸った。
「嫌ぁ!!」
 放たれたのは拒絶の、だがどこか甘く濡れた言葉。ヘネラリーフェはロイエンタールの愛撫に流されまいと、賢明に躰に力を入れ、口唇を噛み締めようとする。
「無駄な足掻きを……身体の力を抜け!!」
 苛ついているような口調で言い放つなり、ロイエンタールが口唇を深く重ねてきた。と同時に、先程と同じように薬が流し込まれ、即効性のそれは途端に躰から力を奪い去る。その様子を目の端に留めながら、ロイエンタールは愛撫を再開した。
 口唇は尚も降下の一途を辿り、胸から脇腹へ、脇腹から下肢へと降りていく。と、ロイエンタールが身を起こし、今度はヘネラリーフェのすんなり伸びた脚を持ち上げ、爪先を口に含んだ。
 ヘネラリーフェの躰がビクリと震え、咄嗟に脚を引こうと試しみたが、ロイエンタールの腕と薬の力に阻まれる。
 綺麗に整えられた優美な爪先を口に含んでワザと湿った音を立てながら吸い、更に指の間に舌先を伸ばし丹念に舐めてやる。
「ぁ……」
 皮膚の薄い敏感な部位を責められ、ヘネラリーフェの口唇から堪えきれず呻きとも喘ぎともとれる微かな声が零れた。
 それでも、そんな自分の声にハッと我に返り、ヘネラリーフェは甘い責めをやり過ごそうと必死の想いで力が入らぬ手を握り締めながら口唇を噛み締める。
 実際、己がどこまでこの凄惨な愛撫に耐えられるのか、ヘネラリーフェでさえも自分に自信が持てなかった。
 ロイエンタールに飼い慣らされるように夜毎抱かれた躰は、与えられるもの全てを悦びとかえ貪欲に呑み込もうと狂いはじめているのだ。
 既に屈辱でさえも心地よく感じられている。意地も矜持も……それらのすべてを忘れ去り、ただロイエンタールに支配されることを強いられ、彼のことしか考えられない人形となり果てることが、だが彼女の心を甘く饐えたような酩酊感に陥れるのだ。
 人に繋がれることが心地良いと思えた。司令官として多くの部下の命と国家の未来を華奢な背に一身に背負うことよりも、そしてロイエンタールに逆らい続けることよりも、与えられる悦びに身を熱く蕩けさせながら人に繋がれている方が……
 ロイエンタールの指と口唇がヘネラリーフェの脚線美をなぞるように上昇していく。大腿の内側に到達したそれが、敏感な肌を甘噛みしそして強く吸う。白皙の肌に朱色の生々しい情痕が鮮やかに浮かび上がった。
「ん……ぅ」
 噛み締めた口唇の端から微かな喘ぎ声が漏れる。既に躰は熱を帯び、意識も朦朧としはじめている。加えて躰に力が入らないため、ただでさえ敏感な肌が尚一層感じやすくなってるのだ。それでも、ヘネラリーフェはなけなしの自尊心で声を殺し続けようとした。
 不意に、ロイエンタールの指がヘネラリーフェの可憐な薄紅色の口唇に触れ、柔らかなそれの形をなぞるように指先を這わせた。ゆっくりと愛撫するかのようなその指の動きに促されてか、ヘネラリーフェの口唇がわななくように微かに動く。
 紅い舌が唇の間にのぞき、無意識にまるで乳飲み子が乳を求めるようにそろりとロイエンタールの指先を舐め、くわえようとした。そこを逃さず、僅かに開いた口唇の間から優美な指を差し入れる。
 強引に差し入れられた指の感触に、ヘネラリーフェは我にかえった。が、時既に遅し。そもそも、睡眠薬の効果で躰の力という力は失われているのだ。ましてや腕を戒められているとあっては、ロイエンタールの指を吐き出すことはできそうになく、また、指の所為で口唇を噛みしめることもできなくなってしまった。
 もう一方の手がヘネラリーフェの大腿の内側を撫でさする。その感触に躰を仰け反らせながら、だが差し入れられた指の所為で声を抑えることもできない。
「声を殺すな」
 それでもなんとか声を押し込めたヘネラリーフェの耳元に、ロイエンタールはまるで追い詰めようとするかのごとく低く囁いた。思わずキッとロイエンタールの顔を睨み付ける。
「そんな目で睨み付けられると、益々苛めたくなるな」
 クツクツと笑いながらヘネラリーフェの口から指を抜くと、ロイエンタールは唾液で濡れたそれをヘネラリーフェの下肢の間の更に奥まった場所にある秘所に這わせた。
「あ……はぁ……」
 噛み締めきれなかった喘ぎ声が可憐な口元から零れ落ちる。その声に押されるようにして、ロイエンタールは更に指を奥まで進ませ、内側を掻き乱した。暖かな内壁がロイエンタールの指に絡みつき、締め付ける。
「ん……あぁ」
 ヘネラリーフェが華奢な肢体を仰け反らせながら甘く呻く。一度禁忌を犯してしまえば後は声を押し殺すこともできないまま、ズルズルと濡れた喘ぎ声が口を割って漏れ出してしまう。そのうち、自らの唾液で濡れた指以外の濡れた感触を覚えだした。追い打ちをかけるようにロイエンタールが囁く。
「嫌だ嫌だと言う割りに躰の方は正直だな。こんなに濡れているぞ」
 ヘネラリーフェの秘所はこれまでのロイエンタールの愛撫を受けて、悦びの証をとろとろと滴らせていた。
「やめ……て……」
 羞恥心と屈辱感から、ヘネラリーフェは顔を背けながら目を閉じる。だが、躰の方は彼の言うとおり正直で……既に歯止めがきかなくなろうとしていた。
「いつまでも強情な女だな」
 緩慢に与えられる愛撫と快感に暴走しそうになる躰を持て余しつつ、だが尚もロイエンタールを強固に拒絶するヘネラリーフェに、ロイエンタールの征服欲が更に吹き出す。
 いいざま、ロイエンタールはヘネラリーフェの大腿に手を掛け押し広げるようにして脚を開かせると、蜜を溢れさせる秘所に舌を這わせた。
「やぁ……あぁぁぁぁぁ……」
 悲鳴にも似た喘ぎ声をたまらず発するヘネラリーフェの秘所に指をかけると、花弁を押し広げ更に奥へと舌先を伸ばす。
「い、いやぁぁぁっ」
 声にならない声がヘネラリーフェの口元から切なげに零れ落ち、躰を仰け反らせたことで腕にも必然的に力が加わり、その腕を拘束した紐が結びつけられている天蓋の柱がギシリと軋んだ音をたてる。同時に細い腰が更なる快感を強請るようにユラユラと揺れだした。
「最初から素直に応じれば良いものを」
 乱れだしたヘネラリーフェの様子にロイエンタールが薄く笑う。うっすらと目を開けたヘネラリーフェは、目尻を朱に染め涙を浮かべながらも、だが最期の力を振り絞るかのように彼の金銀妖瞳を睨み付けた。 
「まだ足りないようだな」
 ロイエンタールが再びヘネラリーフェの先程より大きく開かせた下肢の間に顔を埋める。途端に華奢な肢体がビクリと跳ね、仰け反り、嫌々をするようにかぶりが左右振られ、つられて柔らかな琥珀の髪が打ち振られて揺れた。喘ぎ声は益々激しさと甘さを増していく。
 せめて腕の自由がきけば、力ずくでロイエンタールを自分から引き剥がすことができるのに、腕を柱に括りつけられている状態では何もできなくて……また、例え腕の自由が利いたとしても、力の入らぬ躰ではどうすることもできず、ただされるがままに巧みな愛撫に身を任せるうち、ヘネラリーフェの口元から啜り泣くような甘い声が漏れだした。
 もう限界だった。徐々にヘネラリーフェの精神が崩壊を始める。
「あん……あ…はぁ……ん………あぁ…うぁ……」
 荒い呼吸と掠れた喘ぎに、閉ざすことを忘れた彼女の口の端からは唾液が零れ落ちる。
 ロイエンタールは、だが愛撫をやめようとはしない。さらに責め苛むように、舌に加えて指での愛撫を施した。
 敏感な花弁の奥に舌を這わせ舐め上げ舐め降ろし、同時に指で内壁を抉るように掻き乱す。時折響く濡れた卑猥な音は、だが今のヘネラリーフェの耳には届いてはいないだろう。
(もう……)
 熱い吐息が震えている。震えながら喘ぐ息が意味ある言葉を求めて足掻き、解放を強請る言葉を綴ろうとしていた。 
 気高いその口唇が、許しを得ようと啼き哀願の言葉を紡ごうとしはじめたのだ。
(お願い……もう……)
 だが、その声は声になる前に霧散し、ロイエンタールの愛撫は一層激しさを増す。
「どうした? 何か言いたいことでもあるのか?」
 意地悪な声がヘネラリーフェの耳に流れ込むと同時に、冷酷な笑みを湛えた金銀妖瞳が真正面から青緑色の濡れた双眸を覗き込んだ。
「……お…願い……」
「何をだ?」
 わかっているくせに、だがロイエンタールは自分からは確信に迫らない。その代わりに、先を促すように指の腹をヘネラリーフェの秘所に這わせなぞる。
「あっ…ん……」
 ヘネラリーフェが背を大きく仰け反らせながらか細い悲鳴をあげ、そして……
 諦めたように脱力しながらヘネラリーフェはロイエンタールの金銀妖瞳から顔を背け目を閉じた。その白皙の頬を一滴の涙が伝って零れ落ちる。
 それこそが、気高いヘネラリーフェが、だがロイエンタールに陥落し屈服した瞬間でもあった。

 

◆◇◆◇◆


「何をして欲しいのか、その可愛い口でちゃんと言ってみろ」
 冷ややかな笑みを端麗な口元に湛えながら、ロイエンタールがヘネラリーフェを追い詰める。だが、既に屈服した精神では抗うことも、またそんな気も起こらないのだろうか……ヘネラリーフェはロイエンタールに促されるまま、その欲望を口にした。
「お願い……もう許して……」
(もう……いかせて……)
 意地も矜持も、そしてなけなしの自尊心も、捕虜になって以来ヘネラリーフェを支えていた全てのものがとうに霧散していた。
「素直な女は好きだぞ」
 ようやく自らの手中に堕ちたヘネラリーフェに余程満足したのだろう。ロイエンタールの声音はどこか優しささえ感じられるものに変化していた。が、その後の行為は優しいとはとても言えるものではなくて。
 ロイエンタールはヘネラリーフェの脚の間に躰を滑り込ませると、限界まで焦らされて震える仄かな桜色に染まった華奢な肢体の腰を掴み浮き上がらせ、そして自らの凶器で一気に彼女を刺し貫いた。 
「あぁーーーーーーっ」
 細く高い悲鳴が豪奢な寝室の中に響き渡る。悲痛にも聞こえるその声が、だが甘い嬌声に取って代わるのにさほど時間はかからなかった。
 ロイエンタールが彼女の柔らかな口唇に己のそれを重ね舌でなぞると、待っていたとばかりに口元を緩ませ紅い舌で彼のそれをを深く引き込み絡ませてくる。
 口付けを強請り、ロイエンタールの身体に脚を絡め、自ら腰をゆすり、甘えるように熱い吐息を吐き、時に緩やかに時に激しく突き上げられ、揺すられ、その度に快感を訴える啼き声をあげ、すべての思考を悦楽の深淵の中に堕ち込ませ、すべてを曝け出し……その姿は清冽な同盟軍艦隊司令官などではなく、ただ快楽の海に溺れるひとりの女でしかなかった。
 ロイエンタールの腕の中でヘネラリーフェの躰が震え出し、それは時を追うごとに尚一層増していく。恐らく限界が近いのだ。そして、ロイエンタールの限界もすぐ近くまで迫ってきていた。
 ヘネラリーフェの躰の下から腕を差し入れ華奢な肩を押さえ付けるようにして抱き締めなおすと、されるがままに突き上げられる細い躰に突き刺した己の灼熱の楔で、更に強く激しく突き上げる。
「きゃぁぁぁ……うぅ……」
 甲高い悲痛な悲鳴と、だがそれとは相反する甘い呻き声を響かせながら、ほどなくヘネラリーフェは華奢な肢体を大きく仰け反らせ絶頂を迎えた。瞬間、彼女の中のロイエンタール自身への締め付けが強まる。促されるようにロイエンタールもまた絶頂を迎え、己の白濁した欲望を彼女の躰に注ぎ込んだ。
 そして二人は、荒い息を吐きながら繋がり絡み合ったまま弛緩し、白いシーツの海に沈み込んだ。
 
「二度と逆らおうなどと思うな」
 激しい情事の後、荒い息も収まりようやく腕の戒めを解かれはしたものの、起きあがる力も気力も萎えたまましどけなく躰を投げ出してベッドに横たわるヘネラリーフェに、彼女の髪に優美な指を絡めて弄びながらロイエンタールが低く囁きかける。
 ヘネラリーフェは声に促されるように、だが虚ろな表情でコクリと頷いて見せた。
 白皙の肌には全身余すことなく、激しい情事の痕が朱色の花弁のように無数に散らされている。
「良い子だな。逆らわず従順でいれば、もっと良い思いをさせてやる」
 甘美な誘惑と毒の込められた言葉……琥珀色の柔らかな髪に絡められた指の感触と、小動物を可愛がっているとも思えるような、情痕を辿る口唇での愛撫の感触もどこか心地良い。
(結局……)
 ボンヤリと霞のかかる意識下でヘネラリーフェは思った。結局、逆らおうが従順でいようが、自分の躰がロイエンタールに嬲られ続けることに変わりはないのだ。より強い快楽を与えられるか、苦痛を与えらるかの違いで、だが置かれた状況は何も変わらない。
「いいな、逆らうなよ。逆らえば、どうなるかわかっているだろう?」
「はい……」
 そう……ロイエンタールは恐ろしい。逆らえば凄惨な責めが待っている。殺される方がまだマシと言えるほどの、陰惨で淫靡な責めが……
 死ぬことに恐怖はない。だが、自分の身が自分ではどうしようもないほどに快楽に溺れるのは、心底恐ろしかった。躰が流されるだけならいい。だが、このままロイエンタールの巧みな愛撫に流され続ければ、心にも歯止めが利かなくなりそうで、それが怖かった。
 ロイエンタール……その言葉がまるで毒のようにヘネラリーフェの身も心も犯し奪い縛り付ける。だから……精神の均衡を保つため、だから敢えて彼女は目を逸らす。ロイエンタールという世界以外の全てから。
 彼女の瞳には、もうロイエンタールの姿しか映らない、映すことを許されない。彼女の耳には、もうロイエンタールの声しか届かない。彼女は彼の人形となり果てたのだから……
 華奢な顎がロイエンタールのしなやかな指に捕らえられ、彼の方を向かされた。
「良い子だな」
 ご褒美とばかりに柔らかな口唇に口付けがおとされる。誘い込むように薄く開けた口唇の隙間からロイエンタールの冷たい舌がスルリと忍び込み、彼女の舌を深く絡め取り強く吸った。
 飲み下しきれなかった唾液が銀糸となって可憐な口の端から滴り落ちる。そんな激しいキスに応じながら、ヘネラリーフェは虚ろな青緑色の双眸と共に思考をも閉じた。


もう……もう、何も考えたくない……
 

Fin
 

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*かいせつ*

つ、ついにあたくし道を踏み外してしまいました(涙)
ええもう、羞恥心もかなぐり捨てましたわぁぁぁ(←壊)
だって、だって……なんだか無性に書きたくなってしまったんですもの……
ってなわけで、ロイ&リーフェの鬼畜エロネタストーリー、いかがだったでしょうか?
いや、いかがもなにもないですね(^^;;) 単にやってるだけなんだから(核)
とにかく二人のイチャイチャを書きたい~~ってずっと思ってて、でも神様降りてきてくれなくて文章が出てこないって時に、ふと「ロイの家の寝室ってやっぱ天蓋付きなんだろうなぁ」と想像したのがいけなかった…… もう、あとは煩悩の成すがままの世界でございます。
本当は純粋に二人が仲良くイチャついているだけのお話が書きたかっただけなのに、何がどう狂えばこのようなエロネタ全開ストーリーになるのでしょう(汗)
ふ……もう私には怖いものはないわ~~(開き直り)
お願いですから、私を見捨てないでぇぇぇぇぇ(切実)

 

2001/9/12 裏人格・紫乃拝

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