メリークリスマス
その日、帰宅したロイエンタールは、自宅の敷地に入った瞬間絶句した。
庭の大きな樅の木に、綿やら赤や金色や青色の飾りがてんこ盛りに飾り付けられていたからだ。てっぺんには、金色の星の飾りも取り付けられている。
邸内に入ると、使用人が疲れたような表情で出迎えるなか、ヘネラリーフェが嬉嬉とした表情で「おかえりなさい」と飛びついてくる。
「表の樅の木はなんだ?」
ぶっきらぼうにロイエンタールが問うと。何を今更といった風情でヘネラリーフェがニッコリと答えた。
「あら、だって折角のクリスマスなんですもの」
杉の木も手頃だったから。
「まさか、お前が飾り付けたのか?」
「勿論!! 木登りは得意なのよ♪」
それでは、さぞかし周りの者を心配させたことだろう。
「それからね、夕食も今夜は私が作ったのよ」
なるほど・・・使用人達が皆疲れたように見えるのは目の錯覚でもなんでもないのだ。
木登りとキッチンへの侵入・・・それはさぞやヘネラリーフェは彼等を振り回したことだろう。
ともあれ、ロイエンタールは軍服から着替えると、ヘネラリーフェと共に夕食の席に着いた。
前菜から始まるフルコースにプラス、目を惹くのはクリスマスプディングと七面鳥の丸焼き。
「これもお前が作ったのか?」
コックやメイド達の苦労を思いやりながら問うと、ヘネラリーフェは可愛くコックリと頷いた。
これで片付けまで完璧にできれば、料理の腕はプロ級なのにと内心で思いながら、食事に手を付けた。
「美味い」
「本当?」
「ああ」
嘘などではく、本当に美味しかった。
猫のリーフェも、今夜は首に新しいリボンを付けてもらって、一緒の部屋で食事を取っている。
平和で安らかな刻。
やがて、場所は食堂から寝室へと移り……
同じベッドの上で二人は抱き合った。
「メリークリスマス、ロイエンタール」
「そうか、クリスマスだったんだな」
今、思い出したようにロイエンタールが呟く。
「やあね、なんだと思っていたの?」
庭の杉の木や食事のメニューからではロイエンタールには今日という日は思い当たらなかったらしい。
「こんなこと初めてだったから」
素直に胸中を吐露する。
その言葉を聞いてヘネラリーフェの瞳から一筋涙がこぼれ落ちる。
「何を泣く? 今夜のことはとても幸せだったぞ」
「ロイエンタール……」
ヘネラリーフェは、涙を流しながらロイエンタールの端麗な口唇にそっと口付けた。
「来年もクリスマス、やろうね」
こう呟きながら……
Fin
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*かいせつ*
折角のクリスマスなので、即興で書いてしまいました。
二人とも幸せなクリスマスを迎えていることでしょう。
ただし、木登り後なので、リーフェの手足は擦り傷だらけだったりして(笑)
そして、彼女が荒らしたキッチンもゴジラが通り過ぎた後と思えてしまうくらいに荒らされていることでしょう(爆)
猫のリーフェちゃんは、新しいリボンを付けてもらえて御満悦かな。
一緒のお部屋でご飯食べられたし。
でも、きっといつでも一緒のお部屋でご飯でしょうね、猫リーフェとあの二人は(笑)
あ、でもロイは仕事が忙しいので、猫リーフェとリーフェでお食事かしら???
凄い険悪ムードだったりして(笑)
2004/12/25 かくてる♪ていすと 蒼乃拝