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思いの儘
 

「わあ!?」
 ヘネラリーフェが感嘆の声をあげた先には、梅の木があった。
 それも、ただの梅ではない。花色が淡紅色、紅色、絞り、白と1つの枝の中にも色々な花を咲かせている珍しい八重咲きの中輪の花なのである。
「宜しければ、一枝持っていかれますか?」
 梅の木を有する屋敷の主が声を掛けるのに、ヘネラリーフェは「是非!!」
と答えていた。
「この梅は思いの儘(おもいのまま)という種類なんですよ」
「思いの儘……」
 正に「思いの儘」に咲き分けている花である。
 ヘネラリーフェは包んでもらった花を大切に持つと、ロイエンタールの待つ私邸へと向かった。

***

「ロイエンタール」
 ヘネラリーフェの呼び声に、読書中だったロイエンタールが顔を上げると、香しい芳香を放つ梅の木が一枝眼に入った。
「どうしたんだ?」
「通り掛かった家の人にもらったの。凄く珍しいでしょ」
 ヘネラリーフェが息せき切って説明するには、つまり花色が淡紅色、紅色、絞り、白と1つの枝の中にも色々な花を咲かせている珍しい梅であるということらしい。
「思いの儘って言う品種なんだって」
「想いの儘か……」
 これはなんとまあ意味ありげな名前か……ロイエンタールは内心で思った。
「同じ思いの儘でも、俺はお前の方が良いな」
「はぁ?」
 疑問顔でロイエンタールの顔を見やるヘネラリーフェの華奢な躰をいきなり横抱きに抱き上げると、彼は彼女の耳元にそっと呟いた。
「お前が俺の腕の中で思いの儘に乱れてくれる姿を見る方が良い」
「ちょっ……」
 気障な言葉の裏の、ロイエンタールの思惑を知り、ヘネラリーフェが頬を赤らめた。
「まだ日が高いわよ」
「そんなことは関係ない」
 ロイエンタールが、ことにこのことにかけては予定変更したことがないことを身をもって知っているヘネラリーフェは、諦めの溜息をそっと吐いた。

***

「リーフェ……」
 そう囁きながら、ロイエンタールがヘネラリーフェの躰をベッドに横たえ、覆い被さってくる。
「ロイ……」
 ロイエンタールの優美な指がヘネラリーフェの着衣を一枚、また一枚と、優しく剥いでいく。そして、眩しいばかりの裸体が彼の金銀妖瞳の前に現れた。
 ヘネラリーフェはロイエンタールの首に手を回して抱きついた。
「ん……」
 ロイエンタールの端麗な口唇がヘネラリーフェの可憐なそれを塞ぐ。その唇が、頬を滑り、耳元に達し、そして耳元を一舐めした。
「きゃっ」
 ロイエンタールは、ヘネラリーフェの弱い所を心得ているかのように、今度は唇を更に首筋へと滑らせ、舌で愛撫しながら、手で形の良い胸の薄紅色に染まる突起を指先で弄んだ。
「う、あん……」
 優美な手は敏感な肌を更に下へと移動し下腹部へ到達すると、女性の尤も弱い部分の突起をまさぐり、なで始めた。
 ヘネラリーフェのそこがしっとりと濡れてくるのを感じると、ロイエンタールは、口唇を首筋から胸元、そして下腹部へと移動し、ヘネラリーフェの奥まった突起を、指でなぞりながら舌で愛撫した。
「あん」
 甘い喘ぎ声が漏れる。
「お前のここは正直だな」
 濡れそぼるそこを舌で愛撫しながら、くぐもった声でロイエンタールが言うと、ヘネラリーフェは両手で自分の顔を隠しながら恥ずかしげに躰を捩らせた。
 いつのまにやら、ロイエンタールも着衣を脱ぎ捨て全裸になっている。そして、身を起こすと、ヘネラリーフェの躰をも起こし、自分のあぐらをかいた膝の上に足を開かせたまま座らせた。
 その間も、ロイエンタールの手は留まることなく、ヘネラリーフェの奥まった部分をなで弄んでいる。
「ロ、ロイ」
 限界が近いのか、半泣きのヘネラリーフェの声がロイエンタールの耳を心地よく掠めていく。
 だが、彼はこれで彼女を達かせてやるつもりはないようで、片手で前も弄びながら、もう一方の手の指をヘネラリーフェの後庭へと滑らせた。
「ひ!!」
 ヘネラリーフェが悲鳴を上げる。
「ロ、ロイ、そこは……」
 ヘネラリーフェの声には耳を貸さず、ロイエンタールの優美な指はヘネラリーフェの後庭に静かに呑み込まれていった。
「や、やだ、ロイ、やめて!!」
「力を抜け」
 ヘネラリーフェの苦言には耳を貸さず、ロイエンタールの前に回った指が、彼女の後庭の苦痛を和らげようと忙しなく愛撫を始める。
「お願い、やめて……」
 涙がヘネラリーフェの白皙の頬を一筋伝ったが、ロイエンタールが行為を止める気配はない。
 それどころかヘネラリーフェの中に指を侵入させてきた。
 そこはもう、しとどに濡れていて、指通りも滑らかで、クチュクチュと卑猥な音をさせている。
「ロイエンタール……」
 もう我慢ができないという風情でヘネラリーフェが彼の名を呼ぶ。半開きの口元からは、銀糸がしたたり墜ちていた。
 ロイエンタールも彼女を痛め付ける為に抱いているわけではないので、彼女の訴えには弱かった。
「おいで」
 そう言うと、ヘネラリーフェの躰を少し持ち上げる。そして、そのままロイエンタール自身の上に彼女の躰をゆっくりと降ろしていった。
「ん……ああ!!」
 後庭の指もそのままで、前と後ろの両方を責める。
 そのうち、ロイエンタールの突き上げる動きが激しくなり、彼の息遣いも激しくなっていった。
 そして暫く後……ヘネラリーフェは歓喜の声を上げながら達し、ロイエンタールもまた、彼女の内側に締め付けられた自身から白濁した欲望を彼女の中へと注ぎ、そのまま二人でベッドに倒れ込んだ。

***

「大丈夫か?」
 ベッドの上で荒く息を吐くヘネラリーフェをロイエンタールが抱き締める。
顔を上げたヘネラリーフェの瞳は、美しく潤んでいた。
「オスカーの莫迦」
 まさか後庭まで弄ばれるとは思ってなかったヘネラリーフェは、半分ショックが画せない様子でそう言った。
「だが、気持ち良かっただろう?」
「・・・・・」
 返す言葉はなかった。気持ち良いというより、奇妙な感じがしたのだ。だが、決して苦痛ではなかった。これもロイエンタールだからこそのことなのだろうか。
「折角梅を貰ってきたのに」
「ああ、確かに美しい梅だが、俺としてはお前の方が良い」
 俺の腕の中で思うが儘に乱れてくれるお前がな……
「莫迦」
 二人は抱き締め合いながらそんなことを一通り言い終えると、仲良く眠りへと墜ちていったのであった。
                              

Fin
 

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*かいせつ*

久々のHネタです。
でも、これまでよりは結構ソフトですよね。
最近不調なせいか、ハードなものがかけないわ(縛)
ちなみに、「思いの儘」という種類の梅は実在です。
もっとも、見たわけではなく、資料で知ったんでけど(^^;

2005/2/10 かくてる♪てぃすと 裏人格・紫乃拝

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